2019/2020号

INCA-FLOW - 連携による成功

ガイド付き適合と自動化による効率アップ

Rowers

INCA-FLOW は、グラフィックデザインエディタでモデリングした適合手順を各種インフラストラクチャー上で実行できる、直感的なツールです。 適合作業の効率性を大幅に向上させられるツールとして市場でも定評があり、今では約100社の自動車メーカーとサプライヤが採用しています。これは2009年に始まったETASとIAVのパートナーシップの大きな成果の一つです。

ますます多機能化して複雑になる運転機能。そこで求められているのが、適合エンジニアへのプレッシャーを自動化によって緩和し、さらには立証済みのプロセスとノウハウを企業全体で活用できるようにする開発ツールの存在です。INCA-FLOWはこのようなニーズに応え、適合作業の標準化に取り組む自動車メーカー、サプライヤ、サービスプロバイダを支援するものです。このツールがあれば、世界のどこからでも同じ適合手順を使って再現性の高い結果を得ることができます。

IAVによって開発され、ETASが2009年から専売権を有して販売しているINCA-FLOWは、両社のパートナーシップが大きな成功を収めた産物だといえます。「この10年間のめざましい成長により、私たちは強固な顧客基盤を築くことができました。この成功の鍵の一つは、業界の進化する要件に合わせてINCA-FLOWに手を加え続けてきたことです」と、ETASのプロダクトマネージャであるThomas Kruseは語っています。IAVのシニアソリューションエキスパート、Sven Meyerはこれに同意して、さらに付け加えます。「INCA-FLOWによって多くの企業で適合と評価の作業が標準化され、自動化されました。それは開発期間短縮とコストダウンにつながり、適合作業の再現性と品質も向上しました」 開発環境にもよりますが、パラメータ設定を手作業で行う場合に比べて30%から80%の効率向上が見込めると、Meyerは言っています

かつては2,000点ほどであったECUのパラメータは、今や60,000点近くにまで増えています。これは、手作業での開発プロセスがもはや不可能になってしまったことを意味するものです。 INCA-FLOWを利用すれば、プログラミングの高度なスキルがなくても、自動化されたパラメータ適合の手順をたやすく定義することができます。INCA-FLOWのグラフィカルユーザーインターフェースでの作業は、適合エンジニアがスクリプトを書くことから始まります。このスクリプトは、計測、評価、適合などの作業をINCAで直接実行するためのものです。これにより、適合作業に関わるエキスパートたちは余計な手間から解放され、それぞれの専門技能を発揮すること - たとえば、排ガスを最小限に抑えられるようECUパラメータを設定する、堅牢なオンボード診断(OBD)を可能にする、燃費やパフォーマンスや運転挙動を最適化する、といったことに全神経を集中させることができます。このようにして得られたベストプラクティスのサンプルがINCA-FLOWによって自動的に文書化され、企業全体からアクセスできるようになります。

これらの機能によりINCA-FLOWは、適合エンジニアや機能開発者だけでなくソフトウェア開発者やプロジェクト管理者にとっても好ましいツールとなっています。 しかも、最新の二つのアドオンを導入すれば、これまで以上に幅広いECU適合の用途にも対応することが可能になります。その一つは「エンジン・トランスミッション ドライバビリティ」アドオン(EDTおよびTDT)です。このアドオンは、従来は主観的に決定されていた適合基準値を客観的な計測値に置き換えるものです。それによって適合作業が簡素化され、比較もしやすくなりました。また、エンジンやトランスミッションの運転特性の改善をエンジニアがリアルタイムに行うことも可能になりました。 たとえば、加速時のトランスミッションのガタつきを抑えるケースを考えてみましょう。記録された情報がINCA-FLOWのユーザーインターフェースに表示されるので、適合エンジニアはパラメータをインタラクティブに変更しながら、ガタつきが最小になる設定を探すことができます。

第二のアドオンは、各種テストベンチへの接続を可能にするもので、こちらもお客様に大変ご好評をいただいています。テストベンチをINCAとINCA-FLOWに接続するインターフェースには、特定メーカーに依存しないもの(CANやASAP3)を利用することができます。 「価格も手頃で効率の良いソリューション」とKruseはコメントしています。 作成したスクリプトはどのテストベンチでも使うことができ、実験計画法(DoE)によってテストの回数を減らすことができます。

IAVとETASのパートナーシップからはもう一つ、INCA-RDEという製品も生まれています。これは、RDE(実路走行排気)の規格に準拠した走行ができているかをリアルタイムにモニタリングし、排ガスのデータをさまざまな図表でINCA上に表示するためのソフトウェアです。従来は、まず計測データを記録しておき、これを後からオフラインツールで評価するのが一般的でした。しかしINCA-RDEでは、ECUパラメータと車載型排ガス計測システム(Portable Emission Measurement System:PEMS)の両方のデータを合わせてINCAの実験環境で視覚化し、それを確認しながらデータをファイルに記録することができるのです。将来は、排出量のピークの原因をソフトウェアに推定させる、といったさらに高度な機能も加わる予定です。これが実現すれば、排気再循環や燃料噴射などの特性に影響するパラメータの調整を、机上ではなくテスト走行中に行うことが可能になります。

すべての適合インフラストラクチャーにおけるINCA-FLOWの展開

まとめ

IAVとETASのパートナーシップは真のサクセスストーリーです。 INCA-FLOWはすでに市場で定評を得ており、ここにもうひとつの優れた製品、INCA-RDEが加わりました。いずれのツールも効率を飛躍的に向上させ、自動車開発者の業務を大幅に簡易化して、顧客の要求を確実に満たすことができます。

執筆者

Axel Heizmann、ETAS GmbH
シニアマーケティングコミュニケーションマネージャ

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