詳細

ES63xシリーズのモジュールには高性能なセンサ用ヒータが搭載されており、その制御と調整を行います。電源から5 Aの加熱電流が0 Vから18 Vの電圧範囲で供給されるので、高速のLSU ADVセンサを5秒以内に動作温度にすることができます。測定プローブの損傷を防ぐために、モジュールの測定ユニットの電源をオフにした後もセンサ加熱の維持が可能です。また測定機能とは無関係に、外部信号(通常“Engine On”)によって加熱をオンにすることもできます。ラムダモジュールはセンサの温度と内部抵抗を常に測定し、この出力情報を提供します。

ES630/ES635(1チャンネル)およびES631/ES636(2チャンネル)ラムダモジュールは、LSUブロードバンドラムダセンサに接続されています。ラムダモジュールはワイドバンドラムダ酸素センサに接続されています。圧力による影響を補正するために、すべてのモデルに内蔵センサが搭載されています。オプションとして、排気システムに取り付けられている圧力センサにES635モジュールやES636モジュールを接続することができます。

大気圧と排気管圧を測定

ES63xシリーズはすべて、内蔵センサで大気圧を測定することができます。ES635モジュールやES636モジュールには、外部圧力センサを接続(追加)することができます。この外付けセンサにより、排気またはエアシステム内の圧力変化を測定することができます。このラムダモジュールは、大気圧と排気管圧の変化がラムダ測定に与える影響を自動で補正することができます。ラムダ測定とは無関係に、圧力信号を詳細な分析に利用することも可能です。たとえば、大気圧の実測値に基づいて、高地テスト走行の試験条件を記録することができます。また外部センサを使用することで、ターボチャージャ内の圧力を測定することができます。

ES63xシリーズのラムダモジュールは、ES600またはES510ネットワークモジュール経由でES600シリーズの測定モジュールと統合して、INCAに接続することができます。

幅広い用途に対応

すべてのモジュールバリアントがディスプレイを搭載し、単独で使用できます。6個のコントロールボタンで、デバイスと表示内容を設定することができます。ディスプレイには一度に2種類の測定値と動作モードを表示します。さらに、測定値を線形化した信号をアナログ電圧(0 V~10 V)として出力することもできます。

イーサネットを介して、適切な測定ソフトウェアが動作しているPCや、他のETAS小型ハードウェアモジュールを接続しているPCにES63xラムダモジュールを直接接続することができます。これらのラムダモジュールは、同時にさまざまな変数の測定値を測定するホストPCに送信します。これらのデータ収集は他のETAS測定モジュールと自動で同期されます。

これらのラムダモジュールは、ETASのINCA開発ツール、測定・ECU適合・診断用の統合環境、INTECRIO・ASCET-RPプロトタイピングツール、およびES910プロトタイピング・インターフェースモジュールをサポートします。すべてのデバイスはRS-232インターフェースを装備し、SMBプロトコルをサポートしています。必要に応じて、既存の測定環境で使用されているLA4ラムダモジュールの代わりにES63xモジュールを使用することができます。

標準化されたデータ伝送インターフェース機能を装備するこれらのラムダモジュールは、XCP-on-Ethernetにより、既存の測定環境に容易に統合することができます。これらの車載対応モジュールは、-40 °C~70 °Cの幅広い温度範囲で使用することができます。

ES63xシリーズのラムダモジュールは、ES400シリーズのマイクロ測定モジュールと統合して、INCAに接続したり、INTECRIOで設定されたES910ラピッドプロトタイピングモジュールに接続したりできます。

ラムダ酸素センサ

ラムダ酸素センサの動作原理は、酸化ジルコニウムの高温時の酸素イオン伝導性に基づいています。ワイドバンドジルコニアセンサの場合、ネルンストセル内のテストガスの酸素含有量はl = 1に設定されます。これは、酸素イオンのポンピング、つまり酸素イオンがテストガスに流入したりテストガスから流出したりすることにより実現されます。ポンピング電流の大きさと方向により、ラムダ値の正確な定義を容易に行うことができます。ワイドバンドジルコニアラムダセンサは、酸素濃度を濃厚(リッチ)と希薄(リーン)の両方の混合気範囲にわたって制御することができます。これらのセンサでは連続的な測定が可能なので、典型的なラムダ制御ループのダイナミクスを強化します。Bosch社製のLSUワイドバンドセンサは、600 °C超という高温環境下でも確実に機能します。これらのセンサは、排ガスの最高温度が930 °C、短期的ピークのピーク温度が1030 °C以下という条件下で恒久的に稼働できるように設計されています。これらのセンサはヒータを内蔵しているので、排気流の温度が低いときでも使用でき、冷えた状態のエンジンが始動されてから数秒以内に作動状態になります。ヒータの効果により、排ガス温度がセンサ信号に与える影響は最小限に抑えられます。

基準測定

車両エンジン開発のテストや適合向けにワイドバンドジルコニアプローブが高精度ラムダ酸素測定デバイスと併せて導入され、ポンピング電流からラムダ値を測定します。このようにして計測されたラムダ値に基づいて、エンジン制御装置のラムダ制御機能の適合が行われています。

ETASは、長年にわたってBosch社製LSUワイドバンドラムダ酸素センサ用のラムダモジュールをご提供しています。弊社のラムダ基準計器は、テストベンチや車載テスト向けの測定設備を構成する定番の測定器です。