搭載されたCAN及びLINのインターフェースを利用することにより、車載バスと通信することができます。また、CANインターフェースは高速CANと低速CANをサポートしており、個別に設定できます。それに加え、ラピッドプロトタイピングバイパス実験において、ETK、XETKによる高速通信インターフェースを利用すれば、モジュール上でシミュレーションしているプロトタイプソフトウェアと開発用ECUを協調動作させることができます。これにより、高度なリアルタイム要件を満たしたラピッドプロトタイピング環境を実現する事が可能です。
また、XETKとCANでオープンなXCPプロトコルもサポートします。
このモジュールの核となるのは、プロトタイプソフトウェアの処理に最適な倍精度浮動小数点演算に対応するNXP PowerQUICC™プロセッサです。このマイクロプロセッサの特性、RTA-OSEKリアルタイムOSおよび内蔵不揮発性RAM(NVRAM)により、システムレベルの挙動を伴うシミュレーションを実行できます。
ラピッドプロトタイピング環境の構築にINTECRIO(ファンクションモデル統合ツール)やASCET(組み込みソフトウェア開発ツール)を使用することで、ES910モジュールの設定を容易に行うことができます。モジュールによるプロトタイプソフトウェアのシミュレーション中、ユーザーはExperiment Environment(実験環境ツール)によってアクセスすることが可能です。
INCA-EIP(実験ターゲット統合パッケージ)アドオンを使用すると、INCAからシミュレーション中のプロトタイプソフトウェアにアクセスできるようになります。これにより、INCAという1つの実験環境ツールでECUとES910モジュール両方のアクセスを可能にし、プロトタイプソフトウェアのデータ収集及び適合とETK、XETK、CAN、およびLINインターフェースを介してECUのデータ収集及び適合を同時に行うことができます。
テストベンチではES910モジュールとINCA-MCE(テストベンチインターフェースツール)アドオンを組み合わせて使用することでECUとテストベンチ自動化システムの間で測定・適合データを迅速に交換する事ができます。
実験環境に応じて、ES920(FlexRayモジュール)、ES921(CANモジュール)またはES922(CAN FDモジュール)をES910モジュールの拡張スロットに追加する事で、ES910基礎モジュールのインターフェース機能を拡張することができます。
特長
- ファンクション開発やECU適合のための小型プロトタイピング/インターフェースモジュール
- リアルタイム演算向けのPowerQUICCTM III MPC8548プロセッサを採用
- ETK、XETK、CAN、LINインターフェースを提供
- FlexRay、CAN、またはCAN FDインターフェースモジュール(ES920、ES921、ES922)を追加してフレキシブルに拡張可能
- INCA、INTECRIO、ASCETに統合可能
- ETK、XETK、XCP-on-Ethernet、XCP-on-CANバイパスをサポート
- ES400シリーズおよびES63xシリーズの測定モジュールの相互接続を実現
- EtherCAT®およびiLinkRT™テストベンチ自動化インターフェース(INCA-MCE)をサポート
- スタンドアロンでの使用が可能
インターフェース
ES910モジュールのメインプロセッサと、I/O、ECUおよび車載インターフェースの分離は、中央のDDR2メモリによって実現されます。インターフェースは、DDR2メインメモリへのストリーミングによるダイレクトアクセスが可能な独立の追加コントローラにより接続されます。
シミュレーションコントローラと車載バスコントローラは互いに依存することなく、DDR2メインメモリにアクセスします。データの完全性を常に保証するために、トリプルバッファプロシージャが適用されています。実装では、この原理をハードウェアレベルで効率的に実現することが特に重視されました。このアーキテクチャにより、シミュレーションプロセッサに負荷をかけないで信号を効率的に収集・送信できます。
コンパクトな構造に各種インターフェースを収め、エネルギー消費を低く抑えるために、ECU/バスインターフェースETK、XETK、CAN、LINのための通信コントローラは、FPGAベースの“System On a Programmable Chip”(SOPC)に基づいて実装されています。
実車やテストベンチのアプリケーション
ETAS INCA/INCA-EIP(実験ターゲット統合パッケージ)は、ES910モジュール上にある試作モデルの新しい制御アルゴリズムを適合することが可能になります。さらに、ES910モジュールは INCAを使用する事で、適合、ECU信号とバス信号の収集、フラッシュプログラミングおよび診断(CAN)を行うことができます。
テストベンチにおける適合の自動化も、ES910モジュールにより対応できます。このモジュールをINCAのINCA-MCE(Measurement and Calibration Embedded)アドオンと併せて使用することで、ECUとテストベンチ自動化システムの間で計測・適合データを高速で交換できるようになります。ES910モジュールはECUとテストベンチの間でデータの変換と転送を行います。ES910モジュールとテストベンチの自動化システム間の通信はEtherCAT®プロトコルかiLinkRT™プロトコルを用いてリアルタイムに行われるので、テストベンチの自動化システムによる計測・適合のサイクルタイムを非常に短くすることが可能です。